猫の歯肉口内炎について|口臭やよだれの増加が気になったら

愛猫の健康を守るためには、口腔内の健康が特に大切です。もし、愛猫の口の中に赤いポツポツがたくさんできている場合、歯肉口内炎の可能性があります。
猫の歯肉口内炎は、重症化すると痛みで食事や水を口にすることも難しくなるため、早期発見と適切な治療が重要です。

今回は、猫の歯肉口内炎について詳しく解説し、予防法や日常のケアについてもご紹介します。

■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ

原因

猫の歯肉口内炎は別名「難治性口内炎」とも呼ばれ、治療が非常に難しい疾患の一つです。この病気は、炎症が口全体に広がったり、口腔粘膜が腫れあがったりして、さらに症状が重くなることがあります。

猫の歯肉口内炎は、さまざまな要因が絡み合って発症します。明確な原因は解明されていませんが、主に以下のような要因が考えられます。

<ウイルス感染>
猫カリシウイルス(FCV)、猫ヘルペスウイルス、猫白血病ウイルス(FeLV)、猫免疫不全ウイルス(FIV)などの感染が関与していることがあります。

 

<口腔内の細菌感染>
歯周病や歯石の蓄積によって口腔内に細菌が増え、炎症を引き起こすことがあります。特に3歳以上の猫の80%以上が歯周病にかかっていると言われています。

歯周病についてはこちらで解説しています

 

<免疫異常>
猫の免疫システムが過剰に反応し、自身の組織を攻撃してしまう自己免疫疾患が原因となることもあります。

 

<栄養不良や内科的疾患>
栄養バランスの崩れや、腎臓病、糖尿病などの全身疾患も関係していることがあります。

 

症状

猫の歯肉口内炎の主な症状は以下の通りです。

食欲不振:強い痛みを伴うため、硬いものを食べたがらなくなります。柔らかい食事しか受け付けなくなることもあります。

よだれの増加:口内の不快感から、よだれが多くなります。

口臭の悪化:口腔内の細菌感染により、口臭が強くなります。

口腔内の出血:歯肉が赤く腫れ、触れると出血することがあります。

毛並みの変化:毛づくろいがうまくできなくなり、毛並みが悪くなることがあります。

脱水と衰弱:症状が進むと、食事や水を取れなくなり、脱水や衰弱を引き起こすことがあります。

 

診断方法

診断はまず問診から始まります。猫の症状や生活環境、過去の病歴などを詳しくお聞きし、その情報を基に診断を進めます。次に、口腔内を直接観察し、炎症や出血の程度を確認します。

その後、全身の状態を把握するために血液検査を行い、特に猫エイズや白血病などのウイルス感染がないかを調べます。これらのウイルスは歯肉口内炎に関係していることが多いため、感染の有無を確認することは欠かせません。

さらに、口腔内の詳細な状態を把握するために、歯科用レントゲンやエコー検査を使って口腔内の構造や歯の状態を詳しく調べます。

 

治療方法

猫の歯肉口内炎の治療は、内科治療と外科治療の2つがあります。

<内科的治療>
症状が軽い場合は、抗菌薬、ステロイド剤、免疫抑制剤、インターフェロン、サプリメントなどを使って炎症を抑え、痛みを和らげます。ステロイドは初期には効果的ですが、長期間の使用には副作用があるため注意が必要です。

 

<外科的治療>
内科治療で効果が見られない場合は外科治療を検討します。歯垢や歯石の除去、全臼歯抜歯(奥歯の抜歯)、さらに重症の場合にはすべての歯を抜く全顎抜歯を行うことがあります。
外科治療には全身麻酔が必要であり、猫の年齢や全身の健康状態によっては手術が難しい場合もあります。

 

予防法やご家庭での注意点

猫の歯肉口内炎を完全に防ぐことは難しいですが、いくつかの対策でリスクを減らすことができます。

まず、ウイルス感染を防ぐためには、ワクチン接種が欠かせません。たとえ完全室内飼いであっても、猫カリシウイルスや猫ヘルペスウイルスの感染リスクはゼロではありませんので、毎年ワクチン接種を行いましょう

日常的な口腔ケアを徹底することも重要です。歯ブラシやデンタルジェルを使って、毎日少しずつでも歯を磨く習慣をつけることが、口内炎の予防に繋がります。最初は無理せず、猫が慣れるまで少しずつ進めるのがポイントです。

さらに、定期的に獣医師によるデンタルチェックを受けることも大切です。定期健診により早期に問題を発見し、適切な対策を講じることで、症状の進行を防ぐことができます。

愛猫の様子をよく観察し、よだれが増えたり、食欲が低下したり、口臭が強くなるなどの変化が見られた場合は、早めに動物病院を受診しましょう。

 

まとめ

猫の歯肉口内炎は、痛みを伴う深刻な疾患ですが、早期発見と適切な治療で症状の改善が期待できます。愛猫の健康を守るためには、日常の観察とケアが欠かせません。もし、愛猫のよだれが増えたり、食欲が低下したりする場合は、早めに動物病院で診察を受けることをおすすめします。

当院では飼い主様と愛猫が安心して治療を受けられるよう、丁寧な説明とサポートを心がけています。愛猫の健康に関して少しでも気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。

 

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