犬と猫の外耳炎について|耳の内部を清潔に保つことが大切

外耳炎は、鼓膜より外側の「耳道」と呼ばれる場所に発生する炎症であり、強い痒みや痛み、不快感を伴うため生活の質(QOL)が大きく低下する病気です。
この炎症は治療によって症状が改善することもありますが、根本的な原因(例えば耳のお手入れ不足や食物アレルギーなど)を解決しなければ、すぐに再発する恐れがあるため注意が必要です。

今回は犬と猫の外耳炎について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。

■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ

原因

外耳炎の原因は以下のように多岐にわたります。

アレルギー(犬アトピー性皮膚炎、食物アレルギー)
細菌感染や真菌感染ブドウ球菌、マラセチア真菌 など)
寄生虫感染(ミミヒゼンダニ、ニキビダニ、マダニ など)
耳に異物が入ることによる物理的な刺激
腫瘍
構造的性質(垂れ下がっている耳、狭い耳道・耳道狭窄、耳道内の毛 など)
その他脂漏症、内分泌失調、分泌腺の異常、水分の滞留 など

細菌やマラセチアという真菌(カビ)の増殖は外耳炎の一般的な原因としてよく挙げられますが、実際には耳の中にはもともと常在菌(ブドウ球菌)やマラセチアが存在しています。これらが耳垢の脂分を栄養源とし、湿気の多い環境下で異常に繁殖することによって問題が生じます。
なお、犬や猫の外耳道はL字型をしており、耳道が狭く、耳の中が蒸れやすい状態になっています。特に、シャンプー時に耳の中に水分が残った場合や、梅雨から夏にかけての湿度の高い時期は、耳の中がさらに蒸れやすくなります。
蒸れやすい環境は細菌の繁殖を促し、外耳炎が発生しやすくなります

犬種や猫種によって耳の形状が異なるため、特定の種に外耳炎が発生しやすい傾向にあります。

耳が垂れている犬種
ビーグル、ミニチュア・ダックスフンド、アメリカン・コッカー・スパニエルなどの耳が垂れている犬種は、立ち耳の犬種に比べて通気性が悪く、耳の蒸れやすさから外耳炎を発症しやすいとされています。

耳の中に毛が密集している犬種
ミニチュア・シュナウザー、トイ・プードル、ヨークシャー・テリアなどの耳の中に毛が密集している犬種も、垂れ耳の犬種と同様に耳の中の通気性が低下しやすいため、外耳炎になりやすいと言われています。

皮脂の分泌が多い犬種
シー・ズー、フレンチ・ブルドッグ、パグなどの犬種は、皮脂の分泌量が多い傾向にあります。皮脂は真菌の栄養源にもなるため、真菌の増殖による外耳炎の発症リスクも高くなります。

アレルギー疾患を発症しやすい犬種
柴犬、ゴールデン・レトリーバー、シー・ズーなどの犬種は、遺伝的にアレルギー性疾患にかかりやすいことから、外耳炎のリスクも高まります。

外耳炎になりやすい猫種は特にありませんが、スコティッシュ・フォールドなど折れ耳の猫は、耳の中がチェックしにくいので、飼い主様が異常を見落としやすい傾向があります

 

症状

犬や猫が外耳炎にかかると痛みや痒みから耳をかく動作が頻繁に見られます
他にも、頭を何度もブルブルと振る、耳を床にこすりつけるなどの行動が見られた場合、外耳炎を発症している可能性があります。

さらに、耳からの悪臭、赤みや腫れの発生、ベタベタとした耳垢や黒っぽい耳垢の増加耳の中や周囲にできものができるなどの症状も、外耳炎の典型的なサインです。
重症化すると、痛みにより触れられることを嫌がるほか、全身の不調や食欲不振を示すこともあります。

 

診断方法

診断は、まず問診や耳の視診から始まります。耳鏡を使用して耳の内部を詳しく観察し、耳垢検査を行って細菌や真菌、寄生虫の感染がないかを調べます。

さらに、状況に応じてオトスコープ(耳の内視鏡)、レントゲン検査、血液検査、細菌培養検査などの追加検査が必要となることもあります。

 

治療方法

外耳炎の治療は、原因に応じて異なります。
耳垢が溜まっている場合は、まず耳洗浄を行い耳の中を清潔にした後に、原因に応じた治療を施します
寄生虫感染が原因の場合は駆虫薬を用い、アレルギーが原因の場合は食事療法やスキンケアが適用されます。また、細菌感染や真菌感染が二次的に起こっている場合は、抗生物質や抗真菌薬(点耳薬や内服薬)の投与を行います。

繰り返し発生する外耳炎や、耳道の狭窄や腫瘍が原因の場合は、手術が必要となることもあります。

 

予防法やご家庭での注意点

予防のためには月に1度は耳掃除を行い、耳の内部を清潔に保つことが大切です。
しかし、間違った耳掃除は逆効果となり、外耳炎を引き起こす可能性があります。
そのため、ご自宅で耳掃除を行う前には動物病院やトリミングサロンなどで正しい耳掃除の仕方を教わってから行うようにしましょう
耳掃除は過度に行うと耳道にダメージを与え、外耳炎の原因となるため、適度に行うことが大切です。シャンプー後は耳の内部を乾燥させることも、予防に役立ちます

また、異常が見られた場合は早めに獣医師に相談し、適切な対応を行うことが重要です。予防接種や定期的な健康診断を受けることも、外耳炎や他の疾患の予防につながります。

 

まとめ

犬や猫は耳の構造上、外耳炎を発症しやすくアレルギーがある場合には再発を繰り返すことも珍しくありません。

治療開始が遅れ、状態が悪化して重症化や慢性化、あるいは内耳炎へと進行してしまうと治療に長期間を要することがあります。
そのため、普段から愛犬や愛猫の耳に注意を払い、異常が見られた際にはすぐに獣医師に相談しましょう。

 

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