※注意 手術画像あり
哺乳動物の清掃は左右の腎臓直下に形成され、ゾウやクジラなどの一部の動物を除き、胎生期から出生後にかけて腹腔から鼠経管、鼠径部皮下を通り、最終的に陰嚢内へ下降します。
これを精巣下降といいます。
犬の場合、精巣下降の完了時期は生後1か月ですが、ビーグルよりも大型の犬種の場合3~4か月を要する場合もあります。6-7か月以降に陰嚢内に左右の精巣が蝕知できない場合、潜在精巣と確定します。
これは多くの犬で鼠径輪の部分的閉鎖が6か月頃に起こるためであります。
正しく陰嚢内に降りてこなかった精巣は、中年期以降、精巣腫瘍の発生率が約10倍程度に増加するので、若齢期に外科的に摘出することが好ましいでしょう。
※猫では潜在精巣自体、犬よりやや稀ですが、存在します。ただ精巣腫瘍の発生が稀なので、腫瘍の発生を予防目的とした潜在精巣摘出は必要ではありません。
しかし、逆に陰嚢内精巣と同等レベルの雄性ホルモンを分泌することもあるので、雄性行動の抑制のために摘出する意義はあるでしょう。(※部屋中におしっこをかけて回る、いわゆるスプレー行動が雄猫で一般的です)
■潜在精巣摘出の一例
1歳になっても片方の精巣が陰嚢内にも鼠径部にも確認できない小型犬の子がいました。
超音波検査で見てみると右図の黄色丸の部分に精巣が見つかりました。膀胱の裏側ですね。
緑の丸は前立腺になります。
この子の場合、事前に精巣の位置がわかっていたので比較的、小さな傷で腹腔内精巣を摘出できました。
以下の画像で、鉗子でつままれているのが腹腔内の精巣になります。
膀胱を反転し、周囲から明るい色をしている精管をたどっていくと精巣までたどり着くこともできます。
最後になりますが、潜在精巣は放置しないことが重要ですね。
文責:秋山紘平