犬や猫の皮膚炎|症状が見られやすい部位による鑑別

5月後半から夏にかけては、犬や猫の皮膚のトラブルが一層増加する時期になります。
特によく見られるのが皮膚炎で、この時期には、赤い発疹や痒みが現れることが多く、さらに皮膚がベタついたり、ガサガサになったりすることもあります

今回は、犬や猫の皮膚炎について、原因ごとの症状が見られやすい部位、診察時の鑑別方法、治療方法、ご家庭での注意点などを紹介します。

 

犬や猫に皮膚炎を起こす病気と症状が見られやすい部位

細菌性皮膚炎(膿皮症)>
皮膚のコンディションが悪化しバリア機能が低下することで、皮膚の常在細菌が増殖し、皮膚炎を引き起こします。

主な症状:痒みや発疹が現れることが多く、円形の脱毛やフケも見られます。さらに毛包に細菌が感染すると、膿が溜まり、白ニキビのような症状が出ることがあります。

症状が出やすい部位:脇、お腹、股、指の間に症状が現れやすいですが、症状は全身のどこにでも出る可能性があります。

 

マラセチア性皮膚炎
皮膚の常在真菌であるマラセチアが原因で起こります。マラセチアが増殖することで皮膚炎を引き起こします。

主な症状:強い痒み、皮膚の赤み、ベタつき、フケの増加、脱毛、色素沈着が起こり、さらに特有のカビのような体臭が発生します。

症状が出やすい部位:脇、内股、指の間、耳の内側から外耳道、口の周り、陰部など、蒸れやすい部位に現れます。

 

皮膚糸状菌症
糸状菌という種類の真菌が原因で発症します。この真菌が皮膚に感染し、増殖することによって皮膚炎が起こります。

主な症状:発疹、皮膚の赤み、フケ、かさぶた、脱毛などがあります。この感染症は、人や他の動物にもうつる可能性があるため、注意が必要です。

症状が出やすい部位:頭、顔、前足に出やすく、次第にお腹や後足、尾にも広がります。

 

脂漏性皮膚炎(脂漏症)>
皮脂が過剰に分泌されることが特徴です。

主な症状:皮膚がベタつき、フケが多く出るようになります。また、過剰な皮脂はマラセチア真菌の餌となるため、マラセチア性皮膚炎など他の皮膚病を引き起こしやすくなります。

症状が出やすい部位:脇、内股、指の間、顔のしわなど、蒸れやすい部位です。

 

アレルギー・アトピー性皮膚炎
食事やハウスダスト、花粉など特定のアレルゲンに反応して、痒みを伴う皮膚炎です。

主な症状:痒みが強いために掻きむしることが多く、その結果、皮膚が傷ついて出血することがあります。さらに、この傷が原因で感染が起こり、膿を伴うことも少なくありません。
また、この状態は細菌性皮膚炎やマラセチア性皮膚炎など他の皮膚病の発症リスクを高め、治療後も再発しやすいという特徴があります。

症状が出やすい部位:耳、顔、目の周り、足先、わき、お腹など全身にわたります。

アレルギー性皮膚炎についてはこちらで解説しています
アトピー性皮膚炎についてはこちらで解説しています

 

ニキビダニ
ニキビダニは非常に小さなダニで、主に毛包に寄生します。

主な症状:脱毛と脱毛部位の赤みですが、通常は痒みを伴いません。

症状が出やすい部位:顔、口の周り、足先などです。

 

疥癬(かいせん)>
ヒゼンダニというダニが寄生することによって引き起こされる皮膚病です。

主な症状:激しい痒みを伴う皮膚炎が発生し、感染は同居する動物にも広がる可能性があります。

症状が出やすい部位:耳、脇、肘、お腹などの部位に症状が現れます。

 

診察時に行う皮膚炎の鑑別方法

皮膚炎の原因を探るために、全身の身体検査を行い、症状の発生前後の状況や、食事内容、散歩ルートなど日常生活の詳細について問診を行います。その後、以下のような皮膚検査を行います。

セロハンテープ試験
患部にセロハンテープやスライドグラスを押し当て、特殊な染色液で染めた後、顕微鏡での観察を行うことで、皮膚に存在する細菌や寄生虫を見つけ出します

抜毛検査
患部の毛を抜いて顕微鏡で観察する検査です。ニキビダニなどの寄生虫を検出します。

ウッド灯検査
ウッド灯と呼ばれる紫外線を患部に当てて、皮膚糸状菌の有無を確認します。

皮膚掻爬検査スクレイピング検査
皮膚を専用の器具で引っ掻き、顕微鏡で寄生虫や細菌を調べます。皮膚の中にいる疥癬(ヒゼンダニ)や、ニキビダニなどの寄生虫を発見するのに非常に効果的ですが、皮膚を強く引っ掻く必要があるため、少量の出血が伴うことがあります。

アレルギー検査
食物アレルギーや環境アレルギー(ハウスダストや花粉など)を特定します。血液検査や皮膚にアレルゲンを直接塗布して反応を見る方法があります。

 

皮膚炎の治療

皮膚炎の原因によって治療方法が異なります。
細菌性皮膚炎、マラセチア性皮膚炎、脂漏性湿疹に対しては、それぞれの病気に適した薬用シャンプー剤を用いたシャンプー療法が一般的です。必要に応じて内服薬を追加することもあります。

皮膚糸状菌症の場合は、抗真菌薬の内服が主な治療法です。
一方、疥癬には駆虫薬を塗布するか内服するとともに今ある症状を和らげるために追加で内服薬や注射を行うこともあります。

アレルギー性皮膚炎やアトピー性皮膚炎の場合、アレルゲンから遠ざけることが重要であり、そのために生活環境の改善や食事の見直しが求められます。

どの皮膚病にも共通しているのは、症状の原因を正確に特定し、その原因に合った治療を選択することが重要です。適切なシャンプー剤や薬を使用するためにも、正確な診断が不可欠です。

 

ご家庭での注意点

皮膚炎と言っても、その原因は多岐にわたります。
ただ共通して言えることは療をせずにいると犬や猫がストレスを感じるだけでなく、患部が広がって治療期間が長引くことがあるということです。
また、飼い主様や他の同居動物に感染する場合もありますので、異常を見つけたらできるだけ早く獣医師の診察を受け、適切な治療を開始しましょう。

 

まとめ

皮膚炎は特定の病名ではなく、さまざまな原因による症状の総称です。正確な診断と原因に応じた適切な治療が非常に重要になります。

また、意外に思われるかもしれませんが、皮膚炎の背後にはホルモンの病気など、他の健康問題が隠れているケースもあります。そのため、皮膚に症状が現れたら、早めに獣医師の診察を受けるようにしましょう。

特に5月末から夏にかけては、気温と湿度の上昇により、皮膚のトラブルが増加する傾向にあります。飼い主様はもちろん、犬や猫がストレスなく快適に過ごせるよう、十分な注意が必要です。
皮膚炎で何か気になることがあれば、お気軽にご相談ください。

 

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