【院長執筆】猫の動脈血栓塞栓症

「急に猫が歩けなくなった」、「足を痛がっている」

 

それは動脈血栓塞栓症かもしれません。

血栓は後肢へと通じる動脈の遠位大動脈に生じることが多く、急性の不全麻痺、激しい疼痛などの急性の兆候を示します。大腿動脈の脈拍が蝕知できなくなり、患肢は冷たくなり、肉球の色は時間の経過や程度により、蒼白から紫色に見えます。体温が低下しているとより深刻度も高いです。

 

血栓ができる原因としては、心筋症と関連することが多いです。

※猫は聴診で心臓病を検出するのが難しく、臨床症状も示さず、心臓病が隠れているケースがあります。心臓病に不安がある方は、血液による検査やレントゲン検査、超音波検査など検査方法がありますので、ご相談下さい。

 

下記の症例は突然の後肢で、血栓が超音波で確認できたところです。

血流が途中で邪魔されているのがわかります(上の方)

発症から比較的時間が早い(6-8時間以内)であれば血栓溶解療法が有効かもしれません。

「血栓溶解療法」はやや費用が高額ですし副作用もゼロではありません。

 

血栓は溶かさずに「保存療法」といって痛み止めを使用しながらこれ以上血栓を作らせないといった守りを主体とした治療方針もあります。

 

上記の症例は副作用も説明した上で、飼い主様は血栓溶解療法を選択されました。

その上で、血栓溶解剤を使用させていただきました。

 

そしてその結果、次の日から少しずつ患肢が動き始め、大腿動脈の脈拍を蝕知できるようになり、動きは完璧ではないですが、3日後、歩けるようになって退院されました。

 

ネコが急に歩けなくなった際にはご用心下さい。

 

文責:秋山紘平