【院長執筆】猫の高血圧性網膜症について

血圧を気にされている方はいらっしゃると思いますが、皆様いかがでしょうか?

実は犬や猫にも高血圧症がございます。

 

今回は特に猫の高血圧によって実際に引き起こされた症例の、網膜剥離について解説いたします。

 

猫の高血圧症の多くは慢性腎臓病に続発した二次性高血圧です。

血圧は病院の血圧計で測定できますので、気になる方は気軽におっしゃって下さい。

 

ある日、腎臓病で通院されている猫ちゃんの飼い主様から「猫の眼が見えていないかもしれない」とのお話がありました。

特に目に傷はなく、痛そうなそぶりもありませんでしたが、眼底(網膜)を観察すると、網膜出血・網膜浮腫・網膜剥離が起きておりました

 

そこで、血圧を測定してみるとやはり、異常な高血圧でした。この時点で高血圧による「高血圧性網膜症」だと診断いたしました。

 

ただちにそのことを飼い主様にお伝えし、高血圧の治療薬を飲んでもらう事となりました。

 

数日経つと、「眼が見えるようになりました」と言ってもらえ、血圧測定をしたところ高血圧は抑えられていました。そして眼底を観察すると片目はほぼ正常な状態に戻っておりました。

 

高血圧性網膜症においては眼が見えなくなってから、正しく診断し、早期に血圧をコントロールすることが重要です。私は以前眼科の専門病院に勤務しておりましたので、多くの高血圧性網膜症の猫ちゃんを目にしてきましたが、当院で働きだしてからは初の症例でした。

 

動物は両目が失明しないと、目が見えない症状が現れません。今回の猫ちゃんの片目はなんとか治療が間に合ったようで、もう片方の眼も現在良化中で経過を見ています。

↑網膜剥離(網膜剥離初期)画像 (この時点では視覚喪失)

網膜血管が浮き上がりピントが合いづらくなっています。

 

↑治療後 網膜浮腫が収まり、ほぼ正常の眼底にわずかに網膜に点状出血のあとが確認できます。(この時点で視覚回復)

 

猫の眼科症例の報告でした。

※当院ではワクチン接種などの健康診断時にもなるべく眼底もチェックしております。

※院内にGENESISという眼底カメラもあるのですが、眼底カメラがなくとも一眼レフと特殊レンズで眼底を撮影できます。

ご興味のある獣医師の先生がいらっしゃいましたら、ご遠慮なくご質問、もしくは来ていただければ、実際にお教えすることもできます。どうぞよろしくお願いいたします。

 

文責:秋山紘平