猫で多い疾患のひとつに、尿路結石症(尿石症)があります。
尿路結石症は、腎臓から膀胱、尿道までの尿路に結晶や結石が形成される病気であり、尿道結石とはその中で尿道に結石が存在する状態のことを指します。
今回は、猫の尿道結石の原因、症状、診断方法、治療方法などを解説します。
■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
結晶や結石が形成される原因には、尿の濃縮や尿の停留時間、尿pHが関係していると言われています。
飲水不足で濃縮された尿が膀胱に長時間溜まることで、尿中の塩類が結晶化し結石が形成されやすくなります。
また、フード中の成分によって尿のpHがアルカリ性に傾くとリン酸アンモニウムマグネシウム(ストルバイト)結石が、酸性に傾くとシュウ酸カルシウム結石が形成されます。
これらの形成された結石が膀胱から尿道に流れることで、尿道結石となります。
さらに、ストレスや肥満も結石の形成リスクを高める要因であると言われています。
尿道結石があると、次のような症状が見られます。
・頻尿
・血尿
・おしりを舐める
・排尿時に痛みで鳴く
など
また、完全に尿道が閉塞してしまい尿が全く出なくなると「水腎症」や「尿毒症」という状態となり、命にもかかわるため注意が必要です。
これらの症状が見られた場合には、すぐに動物病院を受診しましょう。
尿道結石は、次のような検査を組み合わせて総合的に診断します。
・臨床徴候の確認
問診で症状やフードの種類などを確認します。
・尿検査
尿のpH、尿中の細胞や結晶の有無などを確認します。
・画像検査
X線検査や超音波検査で結石の大きさや数、位置を確認します。
・血液検査
血液検査で全身状態や尿毒症の有無などを確認します。
まずは尿道カテーテルの挿入や生理食塩水による洗浄で、結石の摘出や閉塞の解除を試みます。尿路閉塞がなく、結石がストルバイトである場合には、療法食による結石の溶解を行います。
尿路閉塞を繰り返す場合や結石があることでの症状がひどい場合には、外科手術によって結石を摘出します。
尿道結石を完全に予防することは困難ですが、発症や再発のリスクを低くするためには飲水量を十分に確保することが重要です。
いつでも新鮮な水が飲めるようにすることに加えて、水飲み場の数を増やす、ウェットフードを使うなどで飲水量を増やす工夫をしましょう。
また、尿石症になりやすい体質である場合には療法食による食事管理を行うことや、トイレを我慢してしまうことがないように、トイレを清潔に保つなど環境を整え、肥満や運動不足を防ぐためにおもちゃ遊びで運動量を確保するなどの対策を取ることも有効です。
尿道結石は、どんな猫でも発症する可能性があります。
普段から飲水量を確保することや、トイレ環境を整えるなどで結石の形成リスクを下げるとともに、もしも愛猫に気になる症状が見られた場合にはすぐに動物病院を受診しましょう。
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〈参考文献〉
獣医内科学 第二版 小動物編