「飼っている動物がご飯を食べない」という訴えはよく耳にします。
その原因はただ単にフードに飽きたというものから、軽度の胃腸炎、歯肉炎といった歯の痛み、そして腫瘍や内臓器の重大疾患まで幅広く存在します。
我々人間もなんとなく朝食欲がない日があったりもしますが、動物の場合言葉をしゃべれないので重症度を推し量る意味でも食欲の有無はかなり重要になってきます。
・なんとなく食べる量が減ってきて、痩せてしまった。
・急に食べなくなってしまい、ぐったりしている。
上記のようなパターンは食欲不振の慢性パターンと急性パターンですが両者とも、早急に解決策を講じなければ(もしくは回復の兆しがみえなければ)急変する危険性が高いです。
原疾患の特定や治療の重要性ももちろんですが、「食べることも治療のうち」という考えのもと当院では下記のような食欲増進剤を用いています。
犬用猫用ともに、液体状のお薬です。
実際に処方した上での所感としては、犬ではかなり効果を実感していますが、バニラフレーバーの味がどうもよくないらしく、大抵の子が薬を飲ませるときに顔をそむけます。
猫の場合、味の問題は犬よりも多い気がします。飲ませた後に、よだれが止まらない子もいました。
下痢・嘔吐等の副作用が記述されていますが、強い副作用は個人的に感じておりません。
犬の食欲増進を効能として、FDA から承認を得た製剤の名は Entyce®(一般的名称:カプロモレリン)といい、来年(2017 年)2 月の新発売を予定しています。本剤は経口の液剤で、主成分であるカプロモレリンは、食欲ホルモンであるグレリンと同じ働きを体内ですることにより、食欲を刺激するという作用機序をもっています。
―「日本で生まれ、海外で育ち、花開いた動物用医薬品」
動物薬事コンサルティング アームズ株式会社http://ahrms.jp/documents/JapanFranceVeterinaryConference2016.pdf
ミルタザピンというお薬はもともとNaSSA
(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)に分類される新しい抗うつ剤になります。
抗ヒスタミン作用が強く、食欲亢進作用が認められる為に人ではそれが副作用として働く場合もありますが、動物では食欲亢進作用は魅力的です。
輸入薬にはなりますが、耳介の内側に塗るだけで、経皮吸収による効果が得られるために薬を飲ませるストレスから動物と飼い主様が解放されます。
実際に処方した上での所感としては、猫ではかなり程度効果を実感していますが、犬でも効果はある様です。
内臓への強い副作用はございませんが、落ち着きをなくしたり、鳴いたりと興奮作用が見られることもまれにあります。
他には、抗ヒスタミン薬のポララミン(d-クロルフェニラミンマレイン酸塩)やプレドニゾロンといったステロイドによる食欲亢進作用もございますが、当院では犬にはエンタイス、猫にはミルタザピン軟膏をお勧めすることが多いです。
参照:https://www.jstage.jst.go.jp/article/dobutsurinshoigaku/29/2/29_52/_pdf
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