犬と猫の慢性腎臓病について|腎臓は一度傷害を受けると再生しない臓器

慢性腎臓病は、長期間にわたり腎臓の機能がゆっくりと低下していく病気です。高齢の犬や猫で多く見られますが、若い子でも発症することがあります。
また慢性腎臓病は治せないため、病気の進行を遅らせることが治療の目的となり早期発見が重要となります。

今回は、犬と猫の慢性腎臓病について解説します。

■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ

原因

慢性腎臓病は、細菌やウイルスの感染や免疫疾患による腎炎、中毒、尿石症、外傷などの疾患によるものや、加齢、遺伝、食事内容、脱水など様々な原因によって腎臓が傷害されることで発症しますが、原因が特定できない「特発性」であることも多くあります。

 

症状

慢性腎臓病になると、初期の段階では無症状ですが、病気が進行すると次のような症状が見られるようになります。

多飲多尿
食欲不振
嘔吐
脱水
便秘
貧血  など

これらの症状が見られ始めた時には、すでに腎機能が25%程度まで低下している状態となっています。
そして末期になると、尿毒症が進行し、より重篤な症状(けいれんや昏睡)などが見られるようになります。

腎臓は一度傷害を受けると再生しないため、これ以上腎機能を低下させないためにも早急に治療を開始する必要があります。

 

診断方法      

慢性腎臓病は、以下の検査を行うことで診断します。

血液検査
全身状態の確認に加えて、腎機能や腎障害の程度を測る項目であるBUN (尿素窒素)、Cre(クレアチニン)、SDMAなどに異常がないかを確認します。特にSDMAはBUNやCreが上昇する前から異常値を示すため、慢性腎臓病の早期発見に有用です。

尿検査
尿比重や尿蛋白の有無などを確認します。

画像診断(X線検査、超音波検査)
腎臓の大きさや形などの状態を確認します。

 

治療方法

慢性腎臓病によって壊された腎臓の組織を再生させる方法は、残念ながらありません。そのため、以下のような方法によって病気の進行を遅らせることが治療の目的となります。

食事療法
腎臓の負担を軽減させるために、タンパク質やリン、ナトリウムなどの成分を制限した療法食を与えます。

輸液療法
皮下点滴や静脈点滴を行い、脱水の改善や老廃物の排泄を促します。

薬物療法
糸球体の血圧を下げる薬や、腎機能の低下を抑制する薬、食餌中のリンを吸着させる薬などを内服します。

また、急性腎不全の際には腹膜透析が適応となる場合があります。
腹膜透析は内臓を覆っている腹膜を利用して血液を浄化します。特殊な設備が必要ないため、腹腔内にカテーテルを挿入する手術を行った後は管理を自宅で行うことも可能です。
どうしても寿命を延ばしたいという場合には、腹膜透析を行うこともご検討ください。

 

予防法やご家庭での注意点

慢性腎臓病を完全に予防する方法は残念ながらありません。
ただし、人間の食事を与えることやペット用のおやつを多く与えることは、犬や猫にとって過剰な塩分やタンパク質の摂取に繋がり、腎臓に負担をかけてしまうことになりますので絶対にやめましょう。

また、慢性腎臓病は初期症状が非常に分かりにくいため、6歳までは年に一回、7歳を超えたら半年に一回は健康診断を受けるようにし、病気の早期発見に努めることが重要です。

 

まとめ

慢性腎臓病の原因は様々ですが、特に高齢の犬や猫で多く見られます。
一度慢性腎臓病を発症すると完治はできないため、早い段階で気付き治療を始めることが予後を左右することに繋がります。

定期的な健康診断を受けるとともに日頃から愛犬・愛猫の様子をよく観察し、もしも気になる症状が見られた場合には病院を受診しましょう。

 

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