当院ではなるべく、ワンちゃん猫ちゃんに痛みを与えずに処置をしたいと考えております。
その中の一つとして「硬膜外麻酔」を一度紹介いたしました。
今回は歯科処置の際の痛み止めについて、ご紹介いたします。
その前に、まずは歯石取りキャンペーンにたくさん来ていただき誠にありがとうございました。
歯磨きが苦手な子もいると思いますが、少しでも手を加えることで歯の健康状態は大きく変わってきますので、引き続き歯磨きを(中にはサプリメントをお勧めした方もいました)続けていただけると幸いです。
話を本題に戻します。
重度の歯石などを原因として、著しい歯茎の後退がある場合、抜歯やむなしとなる場合がございます。歯を抜く処置をしている際には痛みが原因と思われる麻酔モニターの変化が生じることがあることから、ガス麻酔をしていても相当の痛みが発生していると考えられます。
※動物病院でのガス麻酔はイソフルランという吸入ガス麻酔が安全かつ、一般的です。
硬膜外麻酔の際にもお伝えいたしましたが、ガス麻酔は覚醒も早く、覚醒後には歯を抜かれた痛みが襲ってきます。
程度にもよりますが覚醒後に5-10分間鳴く子もいますし、数時間涎が止まらない子もいます。
これは以前よりなんとかしたいと考えていた現象です。やはり痛がるのを見るのはかわいそうですし、心が痛みます。
現在では「上顎神経ブロック」「下顎神経ブロック」という方法を導入しております。痛みを感じる神経に長時間作用する痛み止めを注射する方法です。
この処置を行ったことにより、ガス麻酔覚醒後に穏やかに過ごす子が増えたことを実感しており、今後も続けたいと考えています。
※血管内に薬剤を注入しないように、注射前にシリンジを引くことで簡単に安全確認ができる安全な処置です。
※この処置に関しては、追加の費用はいただいておりません。
当院では動物の痛みに関して、かなり注力しております。
しかし特別な痛み止めを行わなくても、手術や処置後に明らかに暴れて痛がっているのは麻酔覚醒後の5-10分もしくは長くても30分程度ですので、飼い主様にお返しするタイミングでは落ち着いていることが多く、痛み止めを行わなかった場合と比較しても、これはあまり飼い主様には実感してもらえないことなのかもしれません。
(手術中の様子を見学できる動物病院様は見学したことがありますが、麻酔覚醒直後の様子まで飼い主様にお見せすることは通常の動物病院では個人的には見たことがありません)
では痛み止めの処置は無駄なのでしょうか・・それは違うと思います!
私自身も膝の手術を受けたことがあり、もちろん回復期やリハビリが苦しかったことはありますが、硬膜外麻酔を含め医療関係者の方々のおかげで、猛烈な苦痛を味わったことはございません。
私は言葉のしゃべれない動物の痛みと向き合い、痛みを伴うであろう処置の直後にも、苦痛を与えない動物病院を目指しております。
どうか今後ともよろしくお願いいたします。
文責:秋山紘平